
「薬学部 留年率」と検索すると、「薬学部は留年しやすい」「進級が厳しい」といった声を数多く目にするのではないでしょうか。結論からお伝えすると、これは単なる噂ではありません。文部科学省が毎年公表している「薬学部における修学状況等」調査によれば、私立大学の6年制薬学部では、標準の6年間で卒業できる学生の割合が国立大学よりも明確に低いことが、公式データからも確認できます。
具体的には、2025年(令和7年)度調査結果では、2019年度入学者を対象とした6年制薬学部の卒業率は、国立大学88.4%に対し、私立大学は65.8%にとどまっており、その差は20ポイント以上にのぼります。もちろんこの数字は留年だけでなく休学・退学も含んだものであり、大学・学科によっても差がありますが、「私立の6年制薬学部は、他学部と比べて標準年限で卒業することが相対的に難しい」という傾向は、公式データからも裏付けられているといえます。
この記事では、薬学部(特に私立6年制)の進級がなぜ厳しいとされるのか、その背景にある共用試験(CBT・OSCE)や進級判定の仕組み、特につまずきやすい学年・科目、そして留年した場合の学費負担の大きさまで、文部科学省の一次情報にもとづいて整理します。あわせて、進級・留年の危機に直面したときにどう立て直せばよいのか、具体的な対処法もお伝えします。なお、この記事は薬剤師を目指す6年制の薬学科を主な対象としており、研究者養成を目的とする4年制学科とはカリキュラムの前提が異なる部分がある点にご留意ください。

この記事の要点を先にまとめます。詳しい内容は後の章で解説しますが、まず結論だけ知りたい方はここだけ読んでも全体像がつかめます。
本題に入る前に、まず薬学部(6年制)特有のカリキュラム構造と、進級判定の仕組みを整理しておきます。ここを理解しておくと、後の章で紹介する「進級が厳しい理由」の意味がより具体的につかめるようになります。
薬剤師を養成する薬学部の課程は、2006年度の入学者から4年制から6年制に移行しました。これは、医療の高度化にともない、薬剤師によりいっそう高い臨床知識と実践力が求められるようになったことを背景とした制度改正です。現在、薬剤師国家試験の受験資格を得るためには、原則として6年制の薬学科(または薬学部)を卒業する必要があります。一方、一部の大学には研究者・研究職の養成を目的とした4年制の学科(薬科学科等)も設置されていますが、この記事では薬剤師を目指す6年制学科を主な対象として解説します。
6年制のカリキュラムは、大きく分けて次のような段階で構成されています。
| 学年の目安 | 主な内容 |
|---|---|
| 1〜2年次 | 物理・化学・生物・数学・統計学などの基礎科目、および有機化学・物理化学などの薬学の土台となる専門基礎科目 |
| 2〜4年次 | 薬理学・薬剤学・薬物治療学・衛生化学・微生物学・免疫学など、薬学の専門科目が本格化する時期 |
| 4年次 | 専門科目の総仕上げと、薬学共用試験(CBT・OSCE)への対策・受験 |
| 5〜6年次 | 病院・薬局での長期の実務実習(合計22週間程度)、卒業研究、薬剤師国家試験対策 |
他学部の多くが「学年が上がるにつれて必修科目が減り、自由に選択できる科目が増える」構造であるのに対し、薬学部は6年間を通じて必修科目の比重が非常に高いという特徴があります。必修科目とは、卒業要件を満たすために必ず修得しなければならない科目のことです。必修科目の考え方や、他学部を含めた一般的な仕組みについては、姉妹記事の必修科目とはで詳しく解説しています。
同じ「薬学部」という名称でも、6年制学科(薬学科)と4年制学科(薬科学科等)では、目指す進路がまったく異なります。6年制学科は薬剤師国家試験の受験資格を得ることを主目的としており、実務実習や共用試験など、この記事で解説する制度はすべて6年制学科を前提としたものです。一方、4年制学科は主に研究者・研究職の養成を目的としており、卒業後は大学院に進学して研究を続ける学生が多く、薬剤師国家試験の受験資格は原則として得られません。同じキャンパス・同じ学部名であっても、履修する科目や進級要件、実習の有無は学科によって大きく異なるため、「薬学部」とひとくくりに語られている情報が、実は6年制学科だけを指している場合と、両方を含んでいる場合があることには注意が必要です。この記事で紹介する進級率・卒業率のデータも、原則として6年制学科を対象とした数字です。
薬学部特有の関門としてよく話題になるのが、薬学共用試験です。これは、学生が病院・薬局での参加型の実務実習に進む前に、最低限必要な「知識」「技能」「態度」が備わっているかどうかを、全国統一の基準で評価する試験で、一般社団法人薬学共用試験センターが実施しています。共用試験は次の2種類で構成されています。
| 試験名 | 評価する内容 | 形式・基準の目安 |
|---|---|---|
| CBT(Computer Based Testing) | 薬学の基礎知識 | コンピュータ上で解答する多肢選択形式の試験。合格基準はおおむね正答率60%程度とされています |
| OSCE(Objective Structured Clinical Examination) | 薬学の基本的な技能・態度 | 調剤・服薬指導・無菌操作などの複数の実技課題(ステーション)を、実際に手を動かして評価される実技試験。すべての課題で基準を満たす必要があります |
多くの大学では、CBT・OSCEの両方に合格しないと、5年次以降の実務実習(病院・薬局での長期研修)に進むことができません。つまり、共用試験は実質的な進級・実習開始の関門として機能しているのです。共用試験に不合格だった場合、多くの大学で再試験の機会が用意されていますが、再試験の回数には限りがあり、それでも基準に届かなければ留年(原級留置)となるのが一般的です。なお、共用試験そのものの合格率自体は、OSCEでは9割台後半〜100%に近い水準で推移しているとされており、共用試験だけが留年の主因というよりは、そこに至るまでの各学年の必修科目を着実に積み上げてこられたかどうかが最終的に問われる仕組みだと理解しておくとよいでしょう。
薬学部に限らず、多くの大学では学年ごとに「次の学年に進むための要件」を定めています。代表的なものは次のとおりです。
薬学部では、この進級要件が学年ごとに細かく設定されており、「前の学年の必修科目をすべて修得していないと、次の学年の専門科目を履修できない」という積み上げ型のカリキュラム設計になっている大学が多いのが特徴です。これは、薬理学や薬剤学といった専門科目が、有機化学や生化学などの基礎知識を前提として組み立てられているためで、基礎が不十分なまま専門科目に進んでも理解が追いつかず、かえって留年のリスクを高めてしまうという教育上の判断にもとづいています。
留年(原級留置)そのものの定義や、留年が確定する一般的な基準・時期については、大学生活全般を対象とした姉妹記事大学生の留年とはでも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。この記事では、薬学部という学部系統に特有の事情に絞って掘り下げていきます。

ここからは、薬学部(特に私立6年制)の進級が厳しいとされる理由を、公式データも交えながら具体的に掘り下げていきます。
薬学部で学ぶ内容は、化学構造式・薬の作用機序・代謝経路・関連法規など、覚えるべき情報量が非常に多いことで知られています。単なる暗記にとどまらず、「なぜその構造がその薬理作用を生むのか」「体内でどのように吸収・代謝・排泄されるのか」といった理解を伴う暗記が求められる点が、他学部の一般的な講義科目との大きな違いです。1科目あたりの試験範囲も広く、複数の専門科目を並行して学ぶ学期には、学習の絶対量そのものが他学部より多くなりがちです。
たとえば有機化学ひとつをとっても、覚えるべき反応の種類は数十から百以上にのぼり、単に暗記するだけでなく、反応機構(電子がどのように動くか)を理解していないと類題に応用できません。生化学では解糖系・TCA回路・脂肪酸代謝といった代謝経路を横断的に理解する必要があり、薬理学では数百種類にのぼる医薬品ごとに、作用機序・適応・副作用・相互作用を紐づけて覚える必要があります。他学部であれば1科目を集中して仕上げれば単位が取れる場面でも、薬学部では複数科目の知識が互いに関連し合っているため、「この科目だけ頑張れば乗り切れる」という単純な対策が通用しにくい構造になっています。
前の章でも触れたとおり、薬学部のカリキュラムは基礎科目の上に専門科目が積み重なる構造になっています。1年次の物理化学・有機化学でつまずいたまま2年次以降に進んでしまうと、薬理学や薬剤学といった専門科目の理解にも影響が及びやすく、一度のつまずきが複数科目に連鎖するリスクがあります。これは、単位を落とした科目を後の学期に個別に取り返せばよい、という単純な構造ではないことを意味しています。基礎科目の理解が浅いまま専門科目に進むと、専門科目自体の単位を落とすリスクも高まり、結果として複数科目の再履修が重なってしまうケースが少なくありません。
実際、薬学教育に関わる大学関係者の間では、「1年次に留年した学生が、その後も複数回留年を重ねてしまうケースが少なくない」という指摘がしばしばなされます。これは、1度目の留年で失った時間や自信を取り戻せないまま、翌年度も基礎科目と新しい専門科目を同時にこなさなければならないという、負担が雪だるま式に増えていく構造があるためです。逆に言えば、1年次・2年次という早い段階で理解不足を解消できれば、その後の学年での負担を大きく軽減できるということでもあります。
薬学部では、化学系・生物系・薬理系などさまざまな実習科目が学年を通じて設置されています。実習科目は座学と異なり、決められた時間に必ず出席し、レポートを期限内に提出することが単位認定の前提となっている場合が多く、他の講義科目の試験勉強と実習のレポート作成が重なる時期には、時間管理の難しさから体調やメンタルを崩してしまう学生も見られます。実習で一定回数以上欠席すると、その実習科目自体が不合格になり、それが必修科目である場合は進級に直結する、という構造も負荷を高める要因のひとつです。
特に3〜4年次になると、化学系・薬理系・製剤系など複数の実習が同時並行で走る時期があり、1週間のうちに複数のレポート提出期限が重なることも珍しくありません。実習中は長時間にわたって集中力と体力の両方が求められるため、講義科目の試験前であっても実習を理由に十分な学習時間を確保できないという声も聞かれます。さらに、実習で扱う機器や試薬の取り扱いを誤ると安全面のリスクにも直結するため、単なる知識だけでなく、手順を正確に再現する集中力も同時に問われる点が、座学中心の他学部との大きな違いです。
前章で解説したとおり、多くの大学では4年次修了時にCBT・OSCEへの合格が実務実習(5年次以降)に進むための条件となっています。この共用試験は、単発の定期試験とは異なり、1〜4年次までに学んだ内容を横断的に問われる試験である点が特徴です。日頃の定期試験を単位取得のためにその場しのぎでクリアしてきた場合、共用試験の段階で知識の抜け漏れが一気に表面化してしまうことがあります。共用試験自体の合格率は高い水準で推移しているとされていますが、これは裏を返せば「共用試験に落ちる学生の多くは、それ以前の学年ですでに単位を落とし、留年を経験している」可能性を示唆しているとも言えます。
共用試験の出題範囲は、薬理学・薬剤学・病態生理学・薬事関係法規・実務(処方箋の読み方や計算問題)など多岐にわたり、模擬試験の結果次第では、本試験までの数か月間、ほぼすべての時間を対策に費やす学生も珍しくありません。多くの大学では4年次の後半に共用試験対策期間として通常の講義が減り、自主学習や補習に重点が置かれるカリキュラム設計になっていますが、それでも範囲の広さから、直前の詰め込みだけでは対応しきれないという声が根強くあります。
薬学部を持つ大学にとって、卒業生の薬剤師国家試験合格率は、大学の教育の質を示す重要な指標のひとつです。国家試験合格率を維持・向上させるためには、国家試験に合格できる学力が備わっていない学生を、安易に卒業させない(あるいは実務実習・国家試験の直前段階まで進ませない)という姿勢を取る大学が一定数あると指摘されています。これは、必修科目の単位認定基準や進級判定を厳しく運用する形で表れることが多く、結果として在学中の留年率が高く出やすくなる一因になっていると考えられます。
文部科学省が公表する薬剤師国家試験の合格率データを見ても、大学によって新卒者の合格率には差があり、この差を生む要因のひとつとして、進級・卒業の判定基準の運用の厳しさが指摘されることがあります。国家試験の受験者数そのものを絞り込む(学力が不十分な学生を留年させて国家試験の受験段階まで進ませない)ことで、結果として大学全体の合格率の数字を維持しているのではないか、という見方も一部にはあります。もっとも、これは複数考えられる要因のひとつに過ぎず、実際にどの程度影響しているかを個別の大学ごとに検証するのは容易ではない点にも留意が必要です。
理由5で触れた「進級判定を厳格に運用する姿勢」の背景には、薬剤師国家試験における新卒者と既卒者(留年・浪人等を経て受験する既卒生)の合格率の違いという、具体的な数字が存在します。厚生労働省が公表した第111回薬剤師国家試験(2026年3月合格発表)の結果によれば、新卒者の合格率は86.25%だったのに対し、既卒者の合格率は41.33%にとどまり、その差はおよそ45ポイントにのぼります。この傾向は特定の回に限った一時的なものではなく、新卒者が80%台半ば、既卒者が40%前後で推移するという構図が、近年の複数回の試験結果で一貫して見られる傾向です。
各大学の「新卒合格率」は、受験を控えた高校生・保護者が大学を選ぶ際の判断材料のひとつとしても注目される数字であり、大学案内や国家試験予備校の集計サイトなどで大学別に公表・比較されることも珍しくありません。在学中に国家試験へ太刀打ちできるだけの学力が備わっていないと判断された学生を、そのまま6年次まで進級させ受験させてしまうと、その大学の新卒合格率そのものを押し下げてしまうことになります。大学側が5〜6年次への進級判定や卒業判定を厳格に運用する背景には、こうした新卒合格率を一定水準に保とうとする教育上・広報上の事情も関係していると考えられます。留年した学生の多くが、翌年度に態勢を立て直して合格を目指すことになりますが、既卒者の合格率が新卒者よりも大幅に低いという現実は、「一度立ち止まった分を取り戻す」ことの難しさも同時に示しているといえるでしょう。
ここまで説明してきた背景を、実際の数字で確認してみましょう。文部科学省「薬学部における修学状況等」2025年(令和7年)度調査結果では、6年制薬学部について、入学者数に対する「5年次進級率」(留年・休学者と編入学者を除いて算出)が、設置者別・入学年度別に公表されています。
| 入学年度 | 国立大学 | 公立大学 | 私立大学 | 国公私計 |
|---|---|---|---|---|
| 2019年度入学者(2023年度に5年次到達) | 95.5% | 86.0% | 75.6% | 77.0% |
| 2020年度入学者(2024年度に5年次到達) | 92.9% | 81.6% | 73.1% | 74.4% |
2つの異なる入学年度のいずれにおいても、国立大学と私立大学の間には約20ポイントの差が確認できます。これは特定の年度だけに見られる一時的な現象ではなく、複数年にわたって一貫した傾向であることを示しています。同じ調査では、標準修業年限(6年)での卒業率についても、設置者別の数字が公表されています。
| 区分(2019年度入学者) | 入学者数 | 卒業者数 | 卒業率 |
|---|---|---|---|
| 国立大学 | 560名 | 495名 | 88.4% |
| 公立大学 | 428名 | 358名 | 83.6% |
| 私立大学 | 9,906名 | 6,521名 | 65.8% |
| 国公私計 | 10,894名 | 7,374名 | 67.7% |
この卒業率の差は、留年に加えて休学・退学も含んだ数字である点には注意が必要ですが、それでも「私立大学の6年制薬学部では、6年間で入学者の3分の1程度が標準年限どおりには卒業できていない」という実態を示す一次情報として、大きな参考になります。なお、私立大学間でも進級率のばらつきは非常に大きく、同じ調査の大学別データを見ると、5年次進級率が90%を超える大学がある一方で、40%を下回る大学も存在します。この差は、大学の優劣というより、各大学がどれだけ厳格に進級判定を運用しているか、また入学者の学力層がどの程度かといった要因が複合的に影響していると考えるのが妥当です。個別の大学名を挙げて断定的に比較することは避けるべきですが、「薬学部だから」と一括りにするのではなく、大学ごとの傾向にも差があることは知っておいてよいでしょう。
なお、大学の留年率という指標そのものの読み方や、全学部を対象とした全国的な傾向については、姉妹記事の大学の留年率データまとめでも詳しく整理しています。この記事とあわせて読むことで、「大学全体の傾向」と「薬学部という学部系統特有の傾向」の両方を立体的に理解できます。
ここまで見てきた国立・私立の差は、単純に「私立が甘い」「国立が厳しい」という話ではなく、いくつかの構造的な違いが積み重なった結果だと考えられます。
なお、私立大学は学納金収入への依存度が高い経営構造ゆえに、退学より留年という形で在籍を継続させる傾向があるのではないか、という見方が一部でなされることもありますが、これは各大学の経営判断に関わる話であり、文部科学省の公式データからその意図までを断定することはできません。上記の定員規模・フォロー体制・入試選抜性といった構造的な要因のほうが、一次データにもとづいた説明としては妥当だと考えられます。いずれにせよ、自分の大学の設置者が国立・公立・私立のどれであっても、目の前の基礎科目を一つずつ着実に積み上げていくという対策の本質は変わりません。
薬学部のカリキュラムの中でも、特に多くの学生がつまずきやすいとされる学年・科目群を、一般的な傾向として整理します。もちろん大学によってカリキュラムの詳細は異なりますが、多くの6年制薬学部でおおむね共通する傾向として参考にしてください。
1年次は、高校までの理科・数学の延長線上にある基礎科目(物理学・化学・生物学・数学・統計学等)を中心に、薬学の土台となる物理化学・有機化学の基礎を学び始める時期です。特に有機化学は、高校化学で学んだ内容よりもはるかに抽象度が高く、分子の立体構造や反応機構といった、目に見えないものを頭の中でイメージしながら理解していく必要があります。ここでつまずくと、2年次以降に本格化する薬理学・薬剤学などの専門科目の理解にまで影響が及びやすいため、「1年次の基礎科目こそが、薬学部6年間で最も重要な関門のひとつ」だと位置づける大学関係者も少なくありません。
2年次以降は、有機化学・物理化学に加えて、薬理学・薬剤学・生化学・微生物学・免疫学・薬物治療学といった専門科目が次々と開講されます。この時期は必修の実習科目も増え、講義の予復習と実習のレポート作成を並行してこなす必要があるため、時間的な負荷が一気に高まります。特に薬理学(薬がどのように体に作用するかを学ぶ科目)と薬剤学(薬の剤形設計・体内動態を学ぶ科目)は、薬学部の中核を成す専門科目でありながら、覚えるべき情報量が非常に多いことから、単位を落とす学生が多い科目として名前が挙がることの多い分野です。
4年次は、それまでに学んだ内容を総復習しながら、薬学共用試験(CBT・OSCE)に向けた対策を進める時期です。この段階になって初めて「1〜3年次に学んだ内容の抜け漏れ」に気づくケースが多く、共用試験対策のための模擬試験を受けてみて初めて自分の弱点を自覚する学生も少なくありません。共用試験を突破できなければ実務実習に進めず留年となるため、4年次は薬学部の中でも心理的なプレッシャーが特に高まりやすい学年だといえます。
共用試験を突破した後は、病院・薬局での長期の実務実習(合計22週間程度)、卒業研究(卒業論文に相当する研究活動)、そして薬剤師国家試験対策という、3つの大きな課題を同時並行でこなす必要があります。実務実習は平日日中に拘束されるため、実習期間中は自分のペースで学習時間を確保しにくく、実習後にまとめて国家試験対策に取り組む学生が多いのが実情です。この時期に体調を崩したり、実習先とのミスマッチでモチベーションが下がったりすることも、留年や卒業延期につながる要因のひとつとして挙げられます。
| 学年の目安 | 特につまずきやすいとされる科目・課題 | つまずきの主な要因 |
|---|---|---|
| 1年次 | 物理化学・有機化学・数学基礎 | 抽象度の高い概念の理解不足、高校範囲との接続の難しさ |
| 2〜3年次 | 薬理学・薬剤学・生化学・分析化学 | 覚えるべき情報量の多さ、実習との時間的な両立の難しさ |
| 4年次 | 共用試験(CBT・OSCE)対策 | 1〜3年次の知識の総合力が問われる、対策不足の顕在化 |
| 5〜6年次 | 実務実習・卒業研究・国家試験対策 | 3つの課題の並行負担、実習中の学習時間の確保の難しさ |
「暗記量が多い」「専門科目が難しい」と言われても、実際にどのような内容でつまずきやすいのか、代表的な科目ごとに具体的に見ていきます。
これらの科目に共通するのは、前提となる基礎知識が欠けたまま先に進むと、途中から一切ついていけなくなるという点です。特に有機化学・物理化学は1年次に学ぶ内容が2年次以降の薬理学・薬剤学の理解の前提になっているため、「1年次の内容を完全に理解してから2年次に進む」という意識を持つことが、後々の負担を大きく左右します。
単位の取り方そのものの基本(履修計画の立て方、必修と選択の違いなど)を今一度確認しておきたい場合は、姉妹記事の大学の単位の取り方も参考になります。薬学部特有の負荷が重なる時期だからこそ、基本的な履修管理を徹底しておくことの重要性が増します。

薬学部(特に私立6年制)で留年した場合、他学部と比べて経済的な負担がより大きくなりやすいという事情があります。これは、6年制であるがゆえに在学期間が長く、かつ1年あたりの学費水準そのものが他学部より高いためです。この章では、文部科学省の公式データにもとづいて、その規模感を具体的に確認していきます。
文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果」によれば、私立大学の薬学系統における初年度学生納付金(授業料・入学料・施設設備費の合計)の平均は2,083,144円でした。実験実習料やその他の費用を含めた総計では2,181,184円にのぼります。
| 区分 | 授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計(授業料+入学料+施設設備費) |
|---|---|---|---|---|
| 私立大学 全学部平均 | 968,069円 | 240,365円 | 172,550円 | 1,380,983円 |
| 私立大学 理科系学部平均 | 1,195,313円 | 245,362円 | 161,378円 | 1,602,053円 |
| 私立大学 薬学系統 | 1,418,656円 | 326,148円 | 338,340円 | 2,083,144円 |
この表からわかるとおり、薬学系統の初年度納付金は、私立大学全体の平均より70万円以上、理科系学部の平均と比べても約48万円高い水準にあります。実験実習を伴う科目が多いことが、施設設備費や実験実習料の水準に反映されていると考えられます。
2年次以降は入学料が発生しないため、仮に初年度以降も授業料・施設設備費・実験実習料等がおおむね同水準で推移すると単純に仮定すると、6年間の総額は次のような試算になります(実際の金額は大学・学年・コースによって変動するため、あくまで目安としての試算です)。
民間の教育情報サイトが独自に集計している数字でも、私立大学の6年制薬学部の6年間の学費総額は1,000万円台前半〜1,400万円程度とされることが多く、上記の文部科学省データにもとづく試算とも近い水準です(こうした民間サイトの集計は公式統計ではないため、あくまで参考値として捉えてください)。
一方、国立大学の授業料・入学料は文部科学省令で標準額が定められており、標準額どおりであれば授業料は年間535,800円、入学料は282,000円です。6年間ではおよそ350万円程度(535,800円×6年+282,000円=3,496,800円)にとどまります。私立大学の薬学系統と比較すると、6年間の総額でおよそ3倍前後の差が生じる計算になり、薬学部における国立・私立の学費差は、他学部以上に大きく開く傾向があることがわかります。
私立大学の薬学系統で1年留年した場合、上記の2年目以降の年間水準(入学料を除く授業料・施設設備費・実験実習料等)から考えると、おおむね150万〜200万円程度の追加負担が生じる計算になります。これは、他学部の留年1年あたりの負担(私立大学全体の平均であれば年間100万円台前半が目安)と比べても重く、6年制という在学期間の長さと合わせて、経済的なインパクトが特に大きい学部だといえます。留年と学費の一般的な関係については、姉妹記事の留年すると学費はどれくらい増えるのかでも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。なお、留年による学費の追加負担が家計にとって大きな不安要素になる場合は、大学の学生課・奨学金窓口に相談することで、授業料の分割納付や、大学独自の緊急支援制度の対象になるかどうかを確認できることがあります。制度の有無・利用条件は大学によって大きく異なるため、まずは在籍する大学に直接問い合わせてみることをおすすめします。
留年によって修得単位数やGPAが一定基準を下回ると、日本学生支援機構の奨学金などが停止・廃止の対象となる場合があります。薬学部は在学期間が長く、奨学金への依存度が他学部より高い家庭も少なくないため、留年が確定的になった段階で、早めに大学の奨学金窓口に相談しておくことが重要です。留年と奨学金の関係については姉妹記事留年すると奨学金はどうなるのかで、保護者への伝え方については留年した子への親の対応で、それぞれ詳しく整理していますので、経済的な不安がある場合はあわせて参考にしてください。
薬学部の学生・保護者が、進級・留年をめぐって陥りやすい失敗パターンを整理しました。自分に当てはまっていないか、チェックリストとして活用してください。
「単位を落としそう」「このままでは進級が危ない」と感じたとき、何から手をつければよいかわからず立ち尽くしてしまう学生は少なくありません。ここでは、実際に危機を感じた段階で取り組むべき対処法を、優先順位の高い順に具体的に整理します。重要なのは、問題を先送りせず、できるだけ早い段階で行動に移すことです。
不安を感じているとき、人はどうしても状況を実際より悪く(あるいは根拠なく楽観的に)捉えてしまいがちです。まず取り組むべきは、感覚ではなく客観的な事実として自分の状況を可視化することです。具体的には、以下の項目を紙やスプレッドシートに書き出してみることをおすすめします。
この作業を自己判断だけで済ませず、必ず教務課や指導教員にも確認することが重要です。履修要覧やシラバスの読み違いによって、実際とは異なる基準で一人で思い悩んでいたというケースは珍しくありません。現在地が正確にわかれば、「あとどれだけ取り返せば進級できるのか」という具体的な目標が見えてきて、漠然とした不安を行動計画に変換しやすくなります。
前の章で解説したとおり、薬学部のカリキュラムは基礎科目の上に専門科目が積み重なる構造になっています。専門科目の対策に手を広げる前に、物理化学・有機化学・数学・統計学といった教養課程の理解不足を最優先で解消することが、遠回りに見えて実は最短ルートになるケースが多く見られます。専門科目の個別の暗記事項を場当たり的に詰め込んでも、土台となる基礎の理解が抜けていると、次の試験・次の学年で同じ壁に再びぶつかってしまうためです。基礎科目の立て直しに取り組む際は、教科書を最初から読み直すのではなく、「どの単元でつまずいているのか」を過去の試験問題や小テストの誤答から逆算して特定することで、限られた時間を効率よく使うことができます。
もう一つ有効なのが、「今できていないこと」を積み上げていく発想ではなく、共用試験・進級判定というゴールから逆算して、今学期のうちに何を終わらせておくべきかを先に決めるという発想です。行き当たりばったりに手を広げてしまうと、試験直前になって「結局どこから手をつければよいかわからない」状態に陥りがちです。学年ごとに、おおまかに次のような視点で逆算計画を立てるとよいでしょう。
| 時期の目安 | 優先して取り組むべきこと |
|---|---|
| 1〜2年次(基礎科目の段階) | 物理化学・有機化学・数学の理解不足を学期末までに解消する。次学期の専門科目が始まる前に基礎を固めておく |
| 2〜3年次(専門科目が本格化する段階) | 薬理学・薬剤学など、後の共用試験でも問われる中核科目を優先。実習のレポートは締切から逆算して早めに着手する |
| 4年次(共用試験対策の段階) | 模擬試験を早期に受け、1〜3年次の抜け漏れをリスト化。苦手分野から順に週単位で潰していく計画を立てる |
この逆算計画は、一人で立てるのが難しい場合、大学のチューターや後述する外部の個別指導を活用しながら組み立てるという選択肢もあります。計画そのものよりも、「計画を立てたら定期的に見直す」というサイクルを回すことのほうが重要です。当初の計画どおりに進まないことは珍しくないため、月に一度程度は進捗を振り返り、優先順位を組み直す機会を意識的に作ることをおすすめします。
多くの薬学部には、成績不振の学生を対象とした学修支援の仕組みが複数用意されています。代表的なものを整理すると次のとおりです。
| 制度 | 内容の目安 |
|---|---|
| チューター制度・アカデミックアドバイザー | 上級生や教員が個別に学習相談に乗る制度。大学によっては成績不振者に対して面談が義務化されている場合もあります |
| オフィスアワー | 担当教員が質問対応のために研究室を開放している時間帯。授業でわからなかった点をピンポイントで解消できます |
| 補習授業・リメディアル教育 | 基礎科目でつまずいた学生を対象とした補講。開講時期や対象科目は大学によって異なります |
| 学生相談室・保健管理センター | 成績不振の背景に体調やメンタルの不調がある場合の相談窓口。学修面と心身の両面からサポートを受けられます |
これらの制度は、存在自体を知らないまま在学期間を終えてしまう学生が一定数いると言われています。「利用したら成績評価に悪影響が出るのではないか」と遠慮してしまう学生もいますが、多くの制度は成績評価とは切り離された学修支援として運用されています。まずは教務課の窓口や大学のポータルサイトで、自分の大学にどのような制度があるかを確認するところから始めてみてください。
単位を落とした、あるいは落としそうな科目がある場合、多くの大学では再試験・追試の制度が用意されています。ただし、受験できる条件(出席日数・平常点の基準等)や、再試験に合格した場合の評価の扱いは大学・科目によって細かく異なります。「まだ再試験があるから大丈夫」と楽観視して対策を先延ばしにした結果、再試験の受験資格自体を満たせなかった、というケースも実際にあります。再試験・追試の一般的な仕組みや注意点については、姉妹記事の大学の再試験・追試とはでも詳しく解説していますので、自分の状況と照らし合わせて早めに確認しておくことをおすすめします。
進級・留年の不安が強くなると、睡眠時間が乱れたり、勉強に手がつかなくなったりと、生活全体のリズムが崩れやすくなります。特に薬学部は実習と試験勉強が重なる時期の負荷が大きいため、睡眠不足のまま無理に勉強時間を積み増そうとしても、かえって定着率が下がり非効率になりがちです。不安や焦りが強いと感じたときこそ、睡眠・食事といった生活の基盤を整えることを後回しにしないようにしてください。一人で抱え込まず、友人・家族・大学の学生相談室など、話せる相手を早めに見つけておくことも、長期的に見れば学修の立て直しを後押しします。
以上のステップは、どれか一つだけを行えばよいというものではなく、現在地の把握→基礎の立て直し→大学の支援制度の活用→制度理解→生活基盤の維持、という順序で並行して取り組むことで、初めて効果が出やすくなります。次の章では、これらの対処法を自分一人で進めるのが難しいと感じた場合に、外部の専門家への相談をどのタイミングで検討すべきかを整理します。
ここまで、薬学部の進級が厳しいとされる理由や、つまずきやすい学年・科目、留年時の学費負担について解説してきました。最後に、「どのタイミングで専門家への相談を検討すべきか」という判断基準をお伝えします。
次のいずれかに当てはまる場合は、大学内の相談窓口だけでなく、外部の専門家への相談も検討する価値があります。
スプリング・オンライン家庭教師の単位・進級サポートでは、薬学部の学生を対象に、教養課程(数学・物理・化学・統計学等)の基礎固めを中心とした個別指導を行っています。薬学部特有の専門課程(薬理学・薬剤学・生化学など)については、指導内容や講師の専門性によって対応可否が変わるため、まずは無料相談でご相談内容をうかがったうえで、対応の可否や進め方を率直にお伝えする形をとっています。
| こんな状態の方に | 無料相談でできること |
|---|---|
| 1〜2年次の物理化学・有機化学・数学等でつまずいている | 現在の理解度をヒアリングし、教養課程の基礎固めのための個別指導が可能かどうかをご案内 |
| 専門課程(薬理学・薬剤学等)の対策に悩んでいる | 専門課程への対応可否を含め、状況に応じた現実的な選択肢(大学の補習制度の活用等)をご提案 |
| 留年が確定的で、今後の学費・学修計画に不安がある | 現在の履修状況や経済的な状況を踏まえ、優先して取り組むべきことを一緒に整理 |
相談から利用開始までの流れは、おおむね次のようになります。
なお、私たちはレポート・課題の代筆や代行は一切行っておらず、本人が理解し、本人の力で単位を積み上げていくための伴走に徹しています。「必ず進級できる」「絶対に留年しない」といった成果を保証するものではありませんが、基礎の立て直しから一緒に取り組むことで、次の関門に向けた土台をつくるお手伝いができます。
なお、6年間という長い在学期間や、積み上げ型のカリキュラムそのものが自分に合わないと感じ、学部・大学を変える選択肢を検討する学生もまれにいます。既に取得した単位を活かしながら別の大学の途中年次に入学できる大学編入という選択肢も、数ある進路の一つとして存在はしますが、薬剤師国家試験の受験資格は6年制薬学部の卒業が前提となるため、進路変更を検討する際は資格取得の見通しへの影響も含めて慎重に判断する必要があります。まずは今の大学での進級・立て直しを目指すことが基本である点は、あらためて付け加えておきます。

A. 文部科学省が「留年率」という単一の統計を公式に発表しているわけではありませんが、関連する公式データとして、2025年(令和7年)度調査結果では、2019年度入学者(6年制)の卒業率は国立88.4%・私立65.8%でした。私立大学では約3割強の学生が標準の6年間で卒業できていない計算になりますが、これは留年に加え休学・退学も含む数字であり、大学・年度によって差があります。
A. 文部科学省の同調査では、6年制薬学部の5年次進級率(留年・休学者を除く)が、2019年度入学者ベースで国立95.5%・私立75.6%、2020年度入学者ベースで国立92.9%・私立73.1%と公表されています。いずれの年度でも約20ポイントの差があり、傾向として一貫しています。
A. 全国統一の公式データがあるわけではありませんが、一般的には1〜2年次の物理化学・有機化学などの基礎科目でつまずくケースと、4年次の薬学共用試験(CBT・OSCE)で不合格になるケースがよく話題になります。基礎科目でのつまずきが後の専門科目の理解にも影響するため、大学関係者の間では1年次の重要性が特に強調される傾向があります。
A. 多くの大学では、CBT・OSCEの両方に合格しないと5年次以降の実務実習に進めない仕組みになっており、再試験の機会はあるものの、それでも基準に届かない場合は留年(原級留置)となるのが一般的です。ただし具体的な運用は大学によって異なるため、詳細は在籍する大学の学則・履修要覧、または教務課への確認が確実です。
A. 文部科学省の調査では、私立大学の薬学系統の初年度学生納付金(授業料・入学料・施設設備費の合計)は平均208万円超でした。2年目以降は入学料がかからないため、留年1年あたりの追加負担はおおむね150万〜200万円程度になると試算されます。国立大学の場合は標準額ベースで年間授業料535,800円程度が目安です。
A. 文部科学省の調査データを見ると、私立大学の中でも5年次進級率が90%を超える大学から40%を下回る大学まで、大学間の差は非常に大きいことがわかります。これは大学の優劣というよりも、進級判定の運用の厳格さや入学者の学力層など複数の要因が影響していると考えられ、一律に「私立は厳しい」「国立は楽」と単純化できるものではありません。
A. できるだけ早い段階、具体的には成績や単位の修得状況に不安を感じた時点での相談をおすすめします。留年が確定してから相談すると、取れる対策の選択肢がかなり限られてしまいます。特に1〜2年次の基礎科目でつまずいている段階であれば、その後の専門科目への影響を最小限に抑えられる可能性が高まります。
A. スプリング・オンライン家庭教師の単位・進級サポートでは、数学・物理・化学・統計学等の教養課程を中心に対応しています。薬理学・薬剤学などの専門課程については、指導内容や講師の専門性によって対応可否が変わるため、応相談となります。まずは無料相談で具体的な状況をお伝えいただき、対応可能かどうかを率直にご案内します。
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特につまずきやすいのは、1〜2年次の物理化学・有機化学などの基礎科目と、2年次以降本格化する薬理学・薬剤学などの専門科目です。基礎科目でのつまずきが後の専門科目にも連鎖しやすいという薬学部特有の構造を理解したうえで、早めに立て直しに着手することが何より重要です。また、私立大学の6年制薬学部は学費の総額も高額であり、留年した場合の経済的なインパクトは他学部より大きくなりやすい点も、早期の対策を後押しする理由のひとつです。
留年率が高い=劣った教育というわけではなく、多くの場合は薬剤師国家試験の合格率や実務実習に出す学生の質を担保するための、厳格な進級判定の結果でもあります。とはいえ、目の前の自分自身にとっては、進級・留年の不安は切実な問題です。基礎科目でのつまずきを感じたら、大学の補習制度や教務課の相談窓口に加えて、単位・進級サポートのような外部の専門家の力も選択肢に入れながら、早めに立て直しの一歩を踏み出してみてください。